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更新日:2013年4月25日

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千代田区における文化芸術振興について(提言)

文化芸術を通じて、ゆたかな千代田区の未来を拓く 千代田区における文化芸術振興について(提言)

    1. 今なぜ文化芸術の振興なのか
    2. 「文化芸術」とは
    3. 千代田区の地域性・文化芸術資源
    4. 文化芸術の基本理念
    5. 文化芸術振興の基本方針
    6. 重点目標と施策

内容

表紙・目次・はじめに

はじめに

戦後復興から経済大国へと歩んだ昭和の時代は、国土開発、基盤整備が進む中、古いものが消えていき、新しいものが作りあげられていく時代であった。伝統、文化が失われ、生活環境にもマイナスの影響があったことも否めない。それでも、この時代は、こうしたマイナス面を補ってあまりある経済発展と所得の上昇があった。全国的、および都市部での交通網の発達は、通勤や長距離移動に大きな便益をもたらし、居住や旅行、企業立地にも大きな効果をもってきた。洗濯機、冷蔵庫、テレビ、自動車、エアコン等、技術革新とともに新たな製品が生まれ、生活の利便性が高まり、生活様式が劇的に変化した。もともとないところからの出発であり、新たな需要はいくらでも生じる余地があった。

しかし、平成不況の中、少子高齢化の進展と近い将来の人口減少時代を控え、時代は大きな転換期を迎えている。生活必需品たる耐久消費財は成熟期を迎え、買換え需要以外あえて作り出さない限りなかなか需要が生まれてこないようになった。こうした経済問題、さらに財政問題を抱える中で進められてきた地方分権改革も、その目標はスケール・エコノミー(規模の経済性)の方に微妙に変化しつつあるようである。

民間や行政がハード面に関心をもっていた間に、人々の関心、行動様式がますます無機的なものになってきた。「もの」はもうある時代。そこに、生身の人間がいるにもかかわらず、携帯電話や電子メール、インターネットに頼り、少子高齢社会の到来にもかかわらず、各地で基礎自治体の規模を大きくしようとの論もにぎやかである。

ハードからソフトへ。お年寄りがいて、子供がいて、通勤する者がいて、ものを作り商いをする者がいる。人間の顔と顔が極めて近い関係の中で生活できる社会。行政の役割も、施設を提供することから、人間が人間をケアすることが中心となる社会。自分の能力を社会に還元する社会。

千代田の豊富な文化芸術資源を生かし、発展させることにより、住民が、通勤者が、喜び、楽しみ、互いに貢献し、尊敬しあう。豊かな気持ちをもつことができれば、都市問題の多くは解消の方向に進むことになる。近くにいる人を思いやる心は、首都東京、日本、さらには世界の平和にもつながっていくのである。

懇談会では、各国文化・芸術の比較論から地域のごみ捨て問題まで、極めて広範な論議が熱心に行われた。このことは、地域の日常生活のあり方が地域の文化、日本の文化、国際関係にも関わることを示している。この提言が、条例化に向け、区民のみなさんのご議論の材料となれば幸いである。「生活環境条例」により住みよいまちへの歩みを進める千代田区が、共生社会のあり方について、さらなる1歩を踏み出すことにより、都市の再生、日本再生に向けた動きの発信源となることを期待する。

平成15年11月

千代田区文化芸術振興施策に関する懇談会

座長 星野泉

1.今なぜ文化芸術の振興なのか

文化芸術は、区民一人ひとりが自分の暮らしの主人公として充実した生活を送るための大切な要素です。

文化芸術を考えることは生き方の問題です。文化芸術を通じて、区民一人ひとりが自分の暮らしの主人公として豊かな生活を実現し、それが新しいまちづくりの出発点になります。ハードを中心としたまちづくりから、文化芸術の振興を通じて、ゆたかさや楽しさ、優しさの溢れる美しい千代田区を創る、ソフトのまちづくりをより一層推進していくことが必要です。さらにそれを世界に発信し、広げていくことで、様々な問題が広がりつつある社会を変えていくことが望まれます。

江戸開府400年を契機に、これまで蓄積されてきた歴史や文化を振り返り、かつてこの地に息づいていた成熟した文化や芸術のゆたかさを私たちは改めて知ることができました。そして今私たちは、千代田区の魅力やまちへの愛着、誇りをこれまで以上に感じています。

長く日本の政治・経済・文化の中心としての役割を果たしてきた千代田区では、多くの人々が行き交い、関わり合って生きています。今も住民だけでなく、その25倍もの在勤・在学の人々が千代田区を構成しています。

これまでの千代田区の歴史や文化が私たちに教えているのは、他の人々との共生を大切にした平和な社会のすばらしさです。それは、自分にも、他人にも、環境にも優しいまち、優しい心を育むまち、互いを思いやり、心豊かで安全に生活できるまちであり、そのような千代田区が私たちの理想です。

文化芸術の振興は、経済優先の社会から、美しさ・優しさといった心を大切にした社会を実現するための重要な要素です。優れた文化芸術は、人々に感動を与え、心を揺り動かし、ゆたかな感性の醸成につながります。区民一人ひとりの生涯にわたる自主的、創造的な活動を基本に、これまでの千代田区に息づく伝統を大切に保存し、伝えること、新しい文化芸術を創り出すこと、そして、それらの文化芸術の担い手を育むことに力を注ぐことが大切です。これらの人々の活動の輪が広がり交流することによって、千代田区全体の文化芸術環境が充実し、千代田区ならではの文化芸術の振興につながるものと考えます。

そして、今後千代田区が、文化芸術施策の推進を将来にわたって確実なものとするために、幅広い議論にもとづく文化芸術振興に関する条例の制定が必要です。

2.「文化芸術」とは

区民の生活そのものに区民の感性を刺激しゆたかにする芸術・芸能等を広く取り込み、生活文化と芸術文化を融合した概念として、文化芸術を捉えます。

文化芸術振興基本法では、「文化芸術」は、文学・音楽・美術・演劇等の「芸術」、雅楽・能楽・歌舞伎等の「伝統芸能」、講談・落語・浪曲等の「芸能」、囲碁・将棋等の「娯楽」などを幅広く含む概念です。そして、「文化芸術は、人々の創造性をはぐくみ、その表現力を高めるとともに、人々の心のつながりや相互に理解し尊重し合う土壌を提供し、多様性を受け入れることができる心豊かな社会を形成するものであり、世界の平和に寄与するものである。」としています。

また、文化は長い歴史の中で創造された人間の知恵や工夫の集積であり、「生活」そのものということもできます。衣食住すべてが文化といえます。とりわけ、千代田区においては、江戸以来連綿と磨き上げられ引き継がれてきた、江戸っ子気質に代表される品格ある生活のスタイルがあります。

そこで、ここでは、こうした区民の生活そのものに、区民の感性を刺激し豊かにする芸術・芸能等を広く取り込み、生活文化と芸術文化を融合した概念として、文化芸術を捉えます。

3.千代田区の地域性・文化芸術資源

千代田区には、長い歴史・伝統があり、文化施設などの整備も進んでいます。文化芸術の担い手となる人の交流も活発であり、文化芸術活動を行うためのバックグラウンドとなる資源が豊富にあります。

(1)伝統文化

千代田区の地域は、江戸時代から現在まで、日本の政治・経済・文化の中心として、その役割を果たしてきました。江戸時代からの成熟した町民文化を基礎に、地区ごとに祭りや芸能・凧や人形、職人の技など特色ある伝統文化が継承されています。

また、千代田区は、文化財の宝庫であり、地下には今でも屋敷の基礎や石組みなどの知恵が眠っています。歴史的な建て物や街並み・景観、史跡などの文化遺産が集積していることも千代田区の大きな特性であり、魅力です。

ただし、無形文化財に指定されている人や伝統技術を持った職人がまちにいてもあまり知られていないなど、豊富な文化芸術資源が十分に生かされていない面があります。また、絶え間のない都市開発により、貴重な文化遺産が失われつつある状況にあるといえます。

(2)生活文化

かつて江戸の町民は、他者との共生を尊び、思いやりの心に基づく行動や生活を大切にしていました。これらの江戸時代に集積された庶民の知恵を学び、今に生かすことは、互いに支え合い、尊重し合う優しさ溢れる社会を形成することにつながります。

地域に残る行事や祭りは、コミュニティを支える重要な活動として世代を越えて人々の生活に浸透しています。特に祭りは、区民の生活と不可分の地域ならではの楽しみ、誇りとなっています。

また、各地域では、古書店街、電気街、学生街、外国の大使館、官庁街など特色あるまちが形成されており、こうした特色を生かすことも、文化芸術の振興によるまちづくりを進める上で重要です。

ただし、こうした地域の活動は、地域によって盛んなところとそうでないところの差が生じています。さらに、地域に子どもが少なくなっていることや、新しい住民の協力を得ることなども課題となっています。

(3)都心文化

日本の首都東京の中心に位置する千代田区は、交通の便がよく、駅も多いため、国内外からの人の行き来が活発です。商業・業務・宿泊施設が集積しており、昼間人口が夜間人口の25倍といった独特の状況にあります。

また、都心として、美術館や劇場、音楽ホール等多くの文化芸術施設や専門学校、大学等の教育機関が集積しています。

ただし、定住人口の減少で、昔のような地域の活気がなくなり、人と人とのつながりも弱くなってきています。大学・企業等が多いものの、それら昼間人口と夜間人口の交流や、新旧の住民同士の交流が十分に図られているとは言えない状況があります。

また、衛生や安全等に関する都市問題が深刻化しつつあり、さらに近年、中小規模のビルに空室が目立つようになったこと、闇金融、風俗営業等が増加しつつあることなど、新たな都市問題も発生しています。

4.文化芸術の基本理念

千代田区における文化芸術施策を貫く基本理念として、次の2点を掲げ、日常的な生活を質の高いものとするとともに、生涯を通じた区民一人ひとりの自主的、創造的な活動の輪がつながって、文化芸術のエネルギーが次々と生まれるまちを実現することが重要です。

(1)美しさを追求し、成熟した文化を今に生かす

―文化的・芸術的生活を日常的に送れるまち―

日常生活を取り巻く文化的・芸術的環境を整え、日常の生活を洗練された質の高いものにすることが、ゆたかな生活文化の創造につながり、意欲的な文化芸術活動の動機付けともなります。

そのためには、区民が文化芸術を創造し、享受する権利を確立することが重要です。それは同時に、区民の自律的な行動の中に、自由な発想や活動を互いに尊重しあい、他者との共生を尊ぶことでもあります。「美しさ」や「品格」を追求し、他人への「心配り」や「マナー」を大切にする行動をコミュニティ文化の原点として千代田区から発信することにより、自己中心的で無責任な行動が減少し、社会のあり方を転換させるような動きが全国に広がっていくことを望みます。

(2)住む人、訪れる人、通う人が、ともに新たな文化芸術を創る

―文化的・芸術的な香りを生み出すまち―

このような日常的な環境を整えるとともに、感動・驚き・楽しさ・おもしろさが次々と生み出されるようなまちにすることが重要です。まちは、文化的、芸術的な刺激があってさらに発展していくものです。人々が、何に出会い、影響を受け夢中になるか。人生をゆたかに生き抜くエネルギーになる素敵な経験に満ちあふれたまちをめざすことを望みます。

千代田区には豊富な文化芸術資源があります。これらの文化芸術資源を発見するとともに、千代田区ならではの新たな文化芸術が次々と創造されていく仕組みをつくり、世界に向けて発信していくような、外に開かれた文化芸術振興を推進することが重要です。

5.文化芸術振興の基本方針

基本理念に基づき、千代田区の文化芸術振興を推進する基本方針として、次の3点を掲げ、千代田区らしい文化的、芸術的な香りが満ち溢れ、人々の感性をゆたかにし、区民が生き生きと暮らしていける社会づくりを進める施策につなげることが重要です。

(1) 千代田区の地域性・文化芸術資源を生かす

伝統文化、生活文化、都心文化に代表される千代田区特有の地域性や豊富な文化芸術資源を生かし、千代田区ならではの文化芸術振興を進める。

(2) 区民の感性を大切にし、主体性・創造性の発揮を尊重する

文化芸術活動の担い手は区民であり、区民による主体性・創造性が発揮されるような環境整備を進め、区民が文化芸術を創造し、享受する権利を尊重する。

(3) 千代田区に住み、働き、学び、集う人々がともに活動し交流する

企業や大学等の昼間区民をはじめ、千代田区を訪れる多くの人々も巻き込み、多くの区民が関与することによって、人々の交流が文化芸術のさらなるゆたかさをもたらす文化芸術振興を進める。

6.重点目標と施策

以上の基本方針に基づき、(1)保存し伝える(2)創る(3)育てる、の3点を重点目標とし、施策を立案・実施することが必要です。

(1)保存し伝える

江戸開府400年をきっかけに、千代田区には、多くの伝統文化や芸術・芸能が集積されていることを改めて知ることができました。また、街のいたるところに、歴史や文化を感じ、千代田区のそれぞれの地域の魅力を再認識しました。これらの千代田区が誇れる伝統文化や街の歴史を将来にわたって保存し、次代に伝えていくことによって、愛着と誇りの持てる千代田区を継承することが重要です。

施策の提案
千代田区の再発見

何を保存し、伝えるのかを考えることは、千代田区を再発見することです。千代田区を知るための行動は、まちに愛着を感じることにつながります。
そのためには、身近なところからまちの記憶を保存することが大切です。もともと建物が建っていた場所の壁に昔の写真を貼ったり、「ここにはこんな人が住んでいた」といった案内も一緒に掲示したりするなど、区民の様々な工夫で、まちの記憶を残す活動を広げていくことが必要です。
また、人間そのものが歴史を背負って生きており、千代田区に住む人々の歴史や経験は、それ自体が貴重な財産といえます。地域にどのような人が住み、活躍しているのかを知ることによって、千代田区を再発見することも重要です。

(施策例)

  • 区民が所蔵する写真を募集し展示、写真集編纂
  • 史跡案内の整備・拡充
  • 旧町名や地名の由来などの掲示
  • 文化芸術地図の製作
  • 昔の祭りなどの映像等の発掘
  • 千代田区民文化芸術人材情報の収集
千代田区をアピール

保存したものを広く知らせて活用することにより、千代田区の魅力をアピールすることができます。そのためには、区外から来た人が地元の人とふれあうことのできるような機会を作ることも大切です。また、区を訪れる人だけでなく、千代田区に興味を持っている世界中の人々に情報を提供していくことが必要です。
そして、それらの情報を入手しやすいようにしていく必要があります。江戸開府400年記念事業で行っている「江戸net」を情報発信のベースとして維持・管理し、多くの区民が見られるように条件整備をしていくことも重要です。

(施策例)

  • 江戸netの拡充などインターネットを活用した情報提供・情報交換
  • 江戸net等を閲覧できるようにするための社会教育会館等へのパソコン常設
  • 文化・歴史に関するレファレンス機能の充実
  • 外国人へのPR
  • 千代田区街案内ツアーの実施
  • 文化ボランティアによる区内の史跡の案内
文化財等の保存・活用

千代田区四番町歴史民俗資料館には、多くの発掘された埋蔵品や区民から提供された文化財が収蔵されています。しかし、資料館の大きさに比べて数があまりにも膨大であるため、残念ながら区民が十分に文化財を活用できる状況にはありません。
また、神田囃子やかっぽれなど伝統芸能については、町会や小中学校等で継承の活動が行われていますが、歴史的な建物や街並みなども含めて、有形・無形の文化財を区の貴重な財産として、保存するだけでなく多くの人々に知ってもらうために、発表の機会を創っていくことが重要です。

(施策例)

  • 歴史民俗資料館の整備・拡充
  • 埋蔵文化財の保存
  • 歴史的な景観・街並みの保存
  • 文化財等に関する情報の提供
  • 文化財等に関する発表機会の提供

(2)創る

地域活性化事業では、地域ごとの個性を生かした地域文化芸術活動が展開されました。この地域には何があるのかといった、地域の資源を活かすことから出発し、人々の新しい交流が生まれています。また、まちづくりサポート事業で見られたアーティストと住民との交流は、双方に刺激的で新たな発見を生み出すものとなっています。街をキャンバスやステージにした新たな文化芸術活動は、人々に刺激と感動を与え、日常生活を活力あるものにしていく力を持っています。

また、千代田区内だけでなく、日本内外の文化を取り入れて千代田区の文化として吸収し、それを全国・世界に発信していくことにより、絶えず新しい刺激が生まれるようにすることが重要です。

施策の提案
地域文化の創造

地域の個性を生かし、古くから在住の区民だけでなく、新しい住民や、地元の企業や大学など様々な人々を取り込んで、誰もが参加できる祭りや地域イベントを行うことが、街の活性化につながります。
企業で働く人や大学に通う学生などを一人の昼間区民としてとらえ、いかに地域の活動に参画してもらうか工夫することも大切です。具体的な事業による交流の中で、昼間区民と住民の連帯の意識が育つと考えられます。
また、区内のコミュニティスクールなど地域の活動拠点でも、音楽祭や寄席など個性ある事業が行われ、地域の文化として定着してきています。これらの地域を基盤とした文化芸術活動をさらに発展させていくことが必要です。
なお、地域ごとに地域性の違いがあるため、取り組めるところから取り組み、それを他地域のモデルとしていくことで、全体の動きにつなげていくことも重要です。

(施策例)

  • 電気に関する先端的なイベントの開催
  • 伝統芸能フェスティバルの開催
  • 地域納涼会等への昼間区民の参加促進など
  • 「エコマネー(地域通貨)」の活用
新たな文化芸術の創造

区民が、多くのアーティストと交流し、活動に参加する機会を創るために、空きビルや区有の空き施設など活用できる空間を工夫して文化芸術活動の拠点として活用することが望まれます。また、区内の大学や専門学校の学生をはじめ、立場や年齢、国籍などを超えた幅広い人々に呼びかけて、アート作品や音楽のコンクールなど、自由な発想のイベントを開催することにより、街のおもしろさ、楽しさを創り出すことが重要です。
また、土日に閑散とするまちの空間を作品発表の舞台として生かしたり、観光資源を開発したりするなど、千代田区の地域性を活用した新たな文化芸術の創造を図ることも重要です。

(施策例)

  • 空きビル、区有の空き施設を文化芸術活動の場として活用
  • 街をステージにした週末のストリートパフォーマンスなどの推進
  • 平日のオフィス街におけるランチ・夕暮れコンサートの開催
  • エイブル・アート(障害者アート)の推進・アートフェスティバルの開催
  • 「ゴミをアートに」コンクールの開催
  • 大学等の合同文化祭の開催
  • ストリートアートの推進
  • アートマネージメント担当者(区民とアートの架け橋を担う人)の公募
美しいまちづくり

成熟した品格ある文化を守り、発展させていくという視点から、きれいな街を創ることが必要です。清潔なまち、趣味の良いまち、洗練されたまち、安心・安全なまちなど、コミュニティとしてまとまりのある美しいまちを新たに創るための取り組みが大切です。
また、少ない人口も見方を変えれば、人がゆったりと暮らせる、人のサイズでのまちづくりにつながります。千代田区ならではの発想で誰にも優しく、美しいまちをつくることが重要です。

(施策例)

  • 界隈の景観コンテストの開催
  • 電線の地中化
  • 美しい景観写真コンクールの開催
  • ネオンの規制

(3)育てる

文化芸術を振興していくためには、文化芸術を担う人材の育成が不可欠です。将来の文化芸術の担い手である子どもたちの育成は、特に大切です。地域が人を育てる、いわゆる地域力を発揮していくことが重要です。
また、芸術家の育成だけでなく、幅広い文化芸術の消費者がいなくては、文化芸術の発展はなく、文化芸術を鑑賞し、楽しむ人々の裾野をひろげていくような取り組みが必要です。

施策の提案
担い手の育成

新たな文化芸術の担い手を増やしていくために、さまざまな人が文化芸術に関わる状況を創り出す必要があります。専門家だけでなく、一般の人々の自由な発想が既存の活動に風穴をあけ、未来を拓いていくことができるともいえます。企業の社会貢献、フィランソロピー活動の定着を図りながら、企業やNPOなどの団体とも連携して、これまでの縦割りの事業を横につなぎ、ネットワークの広がりを創ることで、人材の育成が図れると考えられます。
生涯学習と文化芸術は不即不離であり、芸術を見る人、聴く人への支援を拡充することが重要です。自然に文化芸術に触れられるようなきっかけづくりが特に求められます。
その際には、博物館やホール、大学など、千代田区に豊富にある施設の活用を促進することが有効です。これらの施設の活用方法について、NPOを含めて、区民が関与していくあり方を検討することが重要です。
また、芸術家の育成についても、街全体がバックアップする息の長い育成に主眼を移していくことも必要です。

(施策例)

  • NPO(民間非営利組織)・自主グループの育成
  • 企業メセナ(芸術文化活動への資金的支援)の推進
  • NPO・企業・草の根活動への場の提供
  • 芸術家を育成する場の創出
  • 芸術鑑賞補助制度
  • 休日学芸員ボランティアの募集
  • 千代田区在住のアーティストによるコンサートの開催
  • アーティスト・イン・レジデンス(国内外から芸術家を招聘し滞在中の活動を支援する事業)の推進
子どもの教育・育成

未来の文化芸術を担う子どもたちに対する事業は、学校を中心に伝統文化の継承などが行われています。それらの活動の成果を発表する場を設けたり、千代田区に豊富にある文化施設を活用して本物の芸術に触れる機会を増やすことが求められます。また、こうした文化芸術を通じて豊かな情操を育む取り組みは、幼児期から取り組むことも大切です。
少子化で区内の子どもの人数は激減していますが、文化芸術を通じたきめ細かな子どもの育成の取り組みは、子どもを情操豊かに育てられるまちの実現につながります。それが、少子高齢社会の未来を切りひらくモデルとして、全国をリードすることが望まれます。

(施策例)

  • 文化芸術を重視した教育の推進
  • 学芸員による「芸術鑑賞」授業の推進
  • 美術館・博物館を活用した体験教育の推進
  • 伝統芸能合同発表会の開催
  • アーティスト・イン・スクール(学校への芸術家派遣)の推進

文化的・芸術的生活を送るために

区民が自由で生き生きとした文化的・芸術的生活を送る中で、区民自らが自律的に行動し、他者への心配りやマナーを大切にする心を養うことが重要です。

かつての江戸の人々は、こうした生活哲学を行動の基本としており、今日「江戸しぐさ」と呼ばれています。この江戸時代の成熟した生活文化を今に生かし、「現代版江戸しぐさ」として、区民の行動規範としていくことを提案します。そして、区民と区がともにその普及に努めていくことを希望します。

「現代版江戸しぐさ」のすすめ

千代田を中心とした江戸時代の文化は、当時の精神性を反映し、粋で品格ある成熟した文化として開花していました。
その精神の中核となるのは、人々の自立・自己責任の考え方であり、本来の「江戸っ子」気質であったと言えるでしょう。自立・自己責任の精神は、「人に頼るな」「独立自尊」「お上は自分たちが支えている」など、江戸の人々のバックボーンであったと言われています。
一方で、他者への気遣いが尊重され、互いに思いやる心が、「かさかしげ(注1)」「肩引き(注2)」「こぶし腰浮かせ(注3)」などのマナーとして徹底していました。「粋」という言葉の語源も、「いきいきと」「生きている」、他人に頼られれば「意気に感じて」自分から進んで行動を起こす、自分の利益より人助けを優先する江戸町人の気質から生まれたと言われています。
私たちは、これらの美しい行動哲学(=「江戸しぐさ」の精神)を現在の区民の行動規範としてよみがえらせ、生活に浸透させていくことで、心ゆたかな千代田区を実現することができると考えます。千代田区における現在の課題・問題に対し、「江戸しぐさ」の精神を現代風にアレンジして適用することによりスマートな解決を図ります。

「現代版江戸しぐさ」の例

  • 通勤:くしゃみや咳のときに口もとに手をあてる
  • 衛生:ごみをできるだけ出さない
  • 交通:すれ違う人に道を譲る
  • 景観:看板やネオンの色や光に気を配る/等

注1:かさかしげ:雨のしずくがかからないように、すれ違いざまにお互いの傘をかしげあって気配りして往来するしぐさ。

注2:肩引き:狭い道ですれ違うとき、肩を引き合って胸と胸を合わせる格好で通り過ぎるしぐさ。

注3:ごぶし腰浮かせ:狭い乗合い船の席で、座っている人たちが腰の両側にこぶしをついて軽く腰を浮かせ、少しずつ幅を詰め1人分の空間を作るしぐさ。

(参考)越川禮子著「江戸の繁盛しぐさ」日本経済新聞社

お問い合わせ

地域振興部文化振興課文化振興係

〒102-8688 東京都千代田区九段南1-2-1

電話番号:03-5211-3628

ファクス:03-3264-1466

メールアドレス:bunkashinkou@city.chiyoda.lg.jp

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