ブックタイトル未来へつなぐバトン 千代田区戦争体験記録集

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概要

未来へつなぐバトン 千代田区戦争体験記録集

に気づかないくらい夢中で逃げていたんです。焼夷弾というものはもう、太い棒のような形でバンバンと落ちてきます。そんな中を逃げて、よくもまあ体に当たらなかったものです。逃げた先は靖国神社でした。大きな木があったから直撃を受けなかったんですね。そこから、燃える写真館を見ました。なんというのでしょうか、嫌だとか悲しいとかでもなく、ただ茫ぼうぜん然と。今も、家が燃えていくその光景を思い出します。──周辺は全部焼けてしまったんでしょうか。ほとんど焼けました。残ったのは1軒と半分でしたね。靖国通りの角に大きな料理屋さんとお菓子屋さんがあって、料理屋さんはそっくり残り、お菓子屋さんは父たち消防団が2階に上がって、途中で消し止めたそうです。消し止めると言っても命がけですよ。何枚もの布ふ団とんを濡ぬらして掛け、それで火を止めるんです。そのお菓子屋さんは「宝ほうらい来屋や本店」といって、今も残っています。焼け跡で焦こげた砂糖のおいしさ──当時は、まわりの人たちはどういう様子だったのでしょうか。人がどうだったか、皆自分のことで手一杯で分からなかったのではないでしょうか。家が焼けた後は、靖国神社の社しゃ務む所しょが残っていて、大きな台所もあったので、落ち着くまで近所の人昭和30年代の九段南付近107未来へつなぐバトン千代田区戦争体験記録集第2部体験記暮らし