ブックタイトル未来へつなぐバトン 千代田区戦争体験記録集

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概要

未来へつなぐバトン 千代田区戦争体験記録集

戦争だけは、絶対にもうやらないでいただきたい。私が味わったような、何もかもなくしてしまったという空くうきょ虚な思い。それは、人の日常の中にあってはならない感情なんです。もう一つ、若い方お一人おひとりが、進む道はみんな違っていても、勉強できるチャンスは逃さないでいただきたいの。いくつになっても、働いていても勉強はできるといいます。でもね、やっぱり頭も体も年とともに衰えていくんですよ。一生懸命に勉強できる時期は、限られています。自分に与えられたチャンスを逃さないで、どんどん欲張って勉強していただきたい。日本はいままた国際的に、難しい状況に置かれていると思います。それでも何とか外交と話し合いで、他国から信頼される国であり続けてほしい。そうしてあんな間違った戦争だけは、二度と起こさない国にしてください。ペンを鉄砲に持ち替えるようなことだけは、していただきたくない。それだけは、お願いします。すが、母は許してくれませんでした。「今うちが、どんなことになっているか分かるでしょう」と。新しい家と店のために、当時のお金にしてもものすごい金額を銀行から借りていましたから。私の学費は出せないってことなんですよ。もう悔くやしくって悔しくってねえ。しばらくは母親と口もきかない、目も合わせない日が続きました。何年か前、やっぱり仏壇の下を整理していたときに母校の名前が入った紙が出てきて。何かしらと思ってみたら、卒業証書でした。ぺらっぺらの、わら半紙1枚のお免めん状じょう。日付は、昭和21年の3月になっていました。──学校には通えなかったんですよね。ええ、でも卒業したことにされたんでしょうね。そういう人がいっぱいいたんだと思いますよ。同級生には、亡くなった方も多いですから。本当にもう、その日その日、食べていくのがせいいっぱい。自分で勉強しようと思って教科書やノートが欲しいと頼んでも、「そんなお金はどこにもない」と突っぱねられるばかりでした。戦争っていうのは、戦争だけじゃなくて、後こう遺い症しょうも残るんです。うちの家族だけだって、とうてい口じゃ言えないことがいろいろと起きました。戦争ほどみじめなものはありませんよ。──そうした体験をしてこられて、今、私たち若い世代に伝えたいメッセージはありますでしょうか。写真左から、長嶋さん、松崎さん、冨川さん、安田さん49未来へつなぐバトン千代田区戦争体験記録集第2部体験記空襲