ブックタイトル未来へつなぐバトン 千代田区戦争体験記録集

ページ
98/214

このページは 未来へつなぐバトン 千代田区戦争体験記録集 の電子ブックに掲載されている98ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

未来へつなぐバトン 千代田区戦争体験記録集

もあります。「なぜ、私ばかり」と思わず、気持ちを切り替えることです。──もし戦争がなかったら、ご自身の人生は変わっていたと思いますか。変わっていると思います。今の世の中も変わっていると思います。ただ、戦争を礎いしずえにして今日があるということは言えると思う。戦争があったことによって今の平和な時代がきたと。私たちの場合はそういうふうに思うほかありません。でも、私たちが不幸だったかというと、そういうことは言ってはいられなかった。子供を持ち、孫を持ち、一生懸命に働いてきました。それで現在があると思っています。──今回は貴重なお話を聞かせていただいてとても勉強になりました。若い世代の私たちに伝えたいことがありましたら、一言お願いします。私たちは「お国のために死ね」という教育を受けてきました。親から授かった命をなくすというのはむごいことです。平和な時代に生まれ、飢えを知らないだけでもあなた方は幸せです。だからこそ、絶対に戦争はしてはいけない。人間は1人で生きているわけではないのだから、自分がこういうことをすると他人に迷惑がかかる、そういう気持ちを絶えず持って生きていっていただきたいと思います。これからの社会を背負って立つ若い人がそういう気持ちで頑張ると、日本はもっとよくなります。どうか頑張ってください。就職するつもりでいましたが、おやじが脳のういっけつ溢血で倒れて亡くなって。私の家は麹町で豆腐屋をやっており、今でいう総理官邸や陸軍省に豆腐を納めていました。大豆の仕入れも都合をつけてもらっていたので、戦争中も商売はできていました。おやじが亡くなって跡を継ぎ、おふくろのためと思って夢中で働きました。──豆腐屋をやりながら大学に通われていたのですか。そうです。豆腐屋は朝が早く、夜も早く寝なくてはいけないから、夜間の学校に行けないんです。私は友達が多かったので、彼らが出席を取ってくれたり、ノートを見せてくれたりと助けてくれて、無事に卒業できました。友達は本当に大切だと思います。──戦争という体験を通して、山口さんが人生でいちばん大切にしてきたことは何でしょうか。友情です。日本には〝わが身をつねって人の痛さを知れ〟ということわざがあるように、自分が言われて嫌なことは人にも言わないことだと思っています。相手が傷つくようなことは言わない。たとえそう思っていても、自分の胸の中にしまっておく。時間がたつとそういった気持ちも消えていきますから。それから、家庭においても笑いを絶やさないこと。先祖を大切にすることももちろん必要ですが、泣いてばかりいないで前へ進むことも大切です。涙の中にも笑いを携たずさえて行動するほうがいい。悔しい、悲しいという気持ちは誰にで写真左から、松崎さん、富山さん、山口さん、千野さん94未来へつなぐバトン千代田区戦争体験記録集