更新日:2025年9月17日
ここから本文です。
令和7年第3回区議会定例会の開会に当たり、私の区政運営における所信を申し上げます。
はじめに、外国人住民と多文化共生について申し上げます。
千代田区は国際都市東京の中心として、国際的な機関や企業、大使館等が立地しており、区内には多くの外国人が暮らしております。
令和7年8月1日現在の区内の外国人人口は4,245人で、総人口に占める割合は約6%となっています。平成27年8月1日の外国人人口は2,593人でしたので、この10年間で約1.6倍に増加したことになります。
特にコロナ禍以降、外国人人口が増加しており、社会経済状況を踏まえると今後もこの傾向が続いていくと見込んでおります。
区ではこれまで多文化共生として、国際交流イベントの実施や国際交流・協力ボランティア養成講座の開催等、区内に暮らす人々が国籍や文化の違いを超えて交流できるような機運醸成を中心に事業を展開してまいりました。
しかし、最近は窓口において対応に苦慮する事例や生活習慣の違いからトラブルに発展する事例等、実務的な課題も見受けられるようになりました。
このため、区では外国人住民の状況や多文化共生に関する課題を把握、分析し、必要な取組みを検討してまいりたいと考えております。
一方で国においては、今年7月15日に「外国人との秩序ある共生社会推進室」が設置され、海外の活力を取り込んでいくことが重要である中、ルールを守らない方々への厳格な対応や制度の見直しは重要な課題との考え方が示されました。
地域の生活者となる外国人住民は、その地域社会に影響を与えることになります。そのような中、多文化共生社会を実現していくには、外国人住民においても、秩序を持ってルールをしっかり守ってもらうことが重要と認識しております。
区では地域の状況や国の動向等を踏まえ、必要に応じた対策を検討してまいります。
次に、日大とのカザルスホール借受に関する協議開始について申し上げます。
カザルスホールのあるお茶の水スクエアA館は、大正14年に主婦の友社の社屋として建てられました。設計は、山の上ホテルの設計者でもあるウィリアム・メレル・ヴォーリズです。昭和62年に旧主婦の友社ビルは構造上の問題から解体されましたが、建築家の磯崎新氏が、ヴォーリズの原設計図面を元に外観は往時のまま復元しました。平成15年には区の景観まちづくり重要物件に指定されています。
カザルスホールは昭和62年の再建時に、世界的に有名なチェリストの名前を冠した日本最初の室内楽専用ホールとして誕生し、著名な音楽家による演奏と、優れた音響で国際的にも高い評価を得てきました。
区の文化芸術の秋フェスティバル「オーケストラフェスティバル」、「コーラスフェスティバル」、「芸能のつどい」が、かつてカザルスホールで行われていたことをご記憶の方もおられることと思います。
このように、カザルスホールは世界的な音響と歴史を誇り、多くの音楽家に愛され、また区民にも親しまれてきました。このたび日本大学からの申し入れを受け、区は日本大学とカザルスホール借受に関する協議を開始いたします。貴重な文化資源として、その価値を未来へつなぐため、協議を進めてまいります。
次に、マンション価格の高騰への区の対応について申し上げます。
現在、区においてはマンション等の価格高騰が続いており、投機を目的としたマンション取引が行われていると考えられます。投機目的のマンション取引が増えることにより、過度な住宅価格の上昇、ひいては賃貸マンションにまで影響を及ぼし、区内に居住したい方々が住めないといった状況が生じています。とりわけ居住実態のない住戸が増えることにより、地域コミュニティの希薄化やマンションの管理運営への悪影響等も懸念されます。
このため7月18日に、市街地再開発事業等で販売するマンションについては、原則5年間の転売禁止と同一建物において同一名義による複数物件購入の禁止を内容とする投機目的でのマンション取引等に関する要請を行いました。
区としては、投機目的でマンションを購入するのではなく、実際に住んでいただく方に購入してもらいたいということで要請を行っています。今後も投機の動向を注視し、他自治体の事例も参考にしつつ、有効な手立てを様々に検討してまいります。
次に、環境に関する取組みとして、ゼロ・ウェイストちよだに向けての取組みと、ネイチャーポジティブの取組みについて申し上げます。
はじめに、無駄や浪費をなくし、ごみゼロを目指す、ゼロ・ウェイストちよだについてです。
本年3月に改定した「第5次一般廃棄物処理基本計画」においては、「2050ゼロ・ウェイストちよだ」を掲げて、2050年に千代田区におけるごみ焼却量や最終処分量を限りなくゼロに近づけることを目指しております。
区内の大手ホテルや一部の駅ビル等では、生ごみの排出ゼロの動きが進んでおり、こうした取り組みをさらに後押ししていく必要があります。
そこで、生ごみの減量に取り組む事業者を後押しするため、事業用生ごみ処理機導入の支援を今年度から開始いたしました。
また、来月から区役所本庁舎10階食堂において、新たに小盛メニューを追加する等、食品ロスの削減を推進するとともに、調理中に出るくずや食べ残しのごみの分別の徹底を図り、生ごみ処理機を設置し、率先して生ごみゼロを目指します。
さらに、10月30日の食品ロス削減の日にあわせて、「第9回食品ロス削減全国大会in千代田」を、千代田区の主催で開催いたします。有識者によるトークセッション、高校生や大学生による事例発表、小中学生による絵画・標語展の表彰等を行います。この全国大会を契機として、先駆的・先進的な千代田区の取組を発信していきます。
次に、生態系の回復、ネイチャーポジティブについてです。
千代田区は都心でありながら、皇居を中心とした豊かな緑や水辺を有しています。水辺環境の改善は、区民の憩いや賑わいの場の創出だけでなく、生態系の回復にも寄与します。
近年、区では都と連携して外濠の水質浄化を進めています。今後は、今年7月に都が策定した「日本橋川周辺のにぎわい創出に向けた基本方針」に基づき、都とさらに連携を強め、日本橋川の水質浄化や賑わいづくりにも取り組んでまいります。
生態系の回復のためには、環境教育も重要です。区では本年度から環境配慮行動宣言である「ちよエコヒーロー宣言」を開始しました。また、啓発イベントとして「北の丸公園でのザリガニ捕獲体験」、「日比谷公園でのセミ羽化観察会」、「区内における生きものさがし」等を実施しています。
また、8月には区内の学生を集めて「外濠の魅力を高めていくためのワークショップ」を開催し、様々なアイデアを出していただきました。
区としましては、これらの取組みをさらに進め、豊かで美しい自然環境を守り、次世代に継承してまいります。
次に、区の公共施設と暫定活用財産について申し上げます。
現在、区が保有する公共施設の多くは、建設から相当の年数が経過しており、今後は築年数が30年、40年を超える施設が増加する見込みです。これに伴い、大規模改修や建替えの検討が必要となる施設も出てくることが想定され、施設の安全性や利便性を確保するためには、仮施設の設置場所の確保を含め、計画的な対応が求められます。
また、区の人口動態に目を向けると、区の人口増加の伸びが鈍化しており、人口推計による年齢構成をみると、今後は高齢化の進行が顕著になることが示されています。こうした社会状況や区民ニーズの変化に応じて、公共施設に求められる機能や役割も変わりつつあることから、変化に柔軟に対応していくことが、今後の行政運営において重要であると考えております。
一方で、本区は地価が高く、まとまった規模の遊休地が少ないという特徴があり、そのため、区内において新たな大規模用地を取得することは極めて困難です。
こうした状況を踏まえて現在、区が暫定的に活用している一定規模以上の土地については、将来の施設需要に備える観点から、その活用の考え方を整理し、計画的に準備を進め、対応していく必要があると考えております。
具体的には、将来の公共施設需要や機能更新に備え、未利用・暫定活用財産のうち一定の敷地面積を有する大規模な区有地については、「留保財産」として、原則、所有権を保有し、留保財産の計画的な活用方針を検討してまいります。
今後、未利用・暫定活用財産の計画的な活用に向けて、区としての基本的な考え方を整理・検討し、議会の皆様にもご説明申し上げながら、将来の行政需要に的確に応えられるよう、着実に準備を進めてまいります。
次に、帰宅困難者対策と防災フェスタの開催について、申し上げます。
先の7月30日、カムチャツカ半島付近の地震に伴い、太平洋沿岸地域では津波警報が発令され、東海道線等一部の鉄道に運転見合わせや遅延が発生しました。帰宅ラッシュの時間帯が迫る中、帰宅困難者等の発生による混乱を防ぐため、東京都からの要請に基づき、区と協定を締結している108施設に対して、帰宅困難者受入要請を行い、うち12施設に開設いただきました。
幸いにして、津波の影響による鉄道の運休や遅延は早期に収まり、施設利用者はなく、駅周辺の混乱もありませんでした。今回の一連の対応につきましてはSNS等を中心に、多方面から感謝の声が寄せられ、区民の皆様だけでなく、来街者の皆様の生命・財産を守る姿勢が評価されたものと考えております。区は、引き続き民間施設との帰宅困難者対策協定の整備及び拡大を進め、よりスムーズな受入施設の開設につなげるとともに、帰宅困難者対策の周知に努めてまいります。
また、区民の皆様の災害に対する危機意識の向上を図るため、今月28日に千代田区防災フェスタを開催します。千代田区として初めての試みであり、子ども・子育て世代を中心に区民の皆様が楽しみながら防災を学べるイベントです。子ども達に人気のあるキャラクターによる防災ステージや、被災地で炊き出しの実績があるキッチンカーによる防災フードの提供、そして、警察、消防、自衛隊、その他多くの関連機関や企業の皆様に参画いただき、様々なコンテンツを提供します。
開催場所は全国的にも知名度の高い日比谷公園です。区民の方だけでなく、来街者の方にもイベントを通じて、区の防災対策や帰宅困難者対策の周知に努めてまいります。
次に、予算決算について申し上げます。
はじめに、令和6年度決算についてです。
令和6年度予算においては、社会全体がコロナ禍からの回復期を迎える中、本区においても新たな日常への適応と、区民の皆様の生活の質の向上を目指し、区民のライフステージに応じた多角的な施策を展開してきました。中でも子育て世代への支援強化として「未来を拓く子どもの笑顔と子育て世代の安心を育む予算」を掲げ、保育環境の整備や相談体制の充実を図ってまいりました。
また、物価高騰の影響が長期化する中、新たに低所得となった世帯に対する給付金や、家計の負担増を踏まえた、区民の暮らしを支援するためのギフトカードの配付に要する経費を予算化する等、生活支援や地域経済の下支えとなる対策を講じてまいりました。
これらの取り組みを実施しました令和6年度決算につきまして、特徴的な内容をご説明いたします。
まず、歳入についてです。対前年度比約35億円の減となりましたが、これはお茶の水小学校・幼稚園の整備に係る社会資本等整備基金繰入金の減が約54億円余と主な要因であり、特別区民税をはじめとする一般財源は堅実に収入することができました。
歳出につきましては、私立保育所等運営補助、建物の耐震化等促進事業、歩道の設置・拡幅整備等一部の事業で不用額を計上しておりますが、全体の執行率は85.6%となり、前年度比で0.2ポイントの改善となりました。
その結果、実質収支額は約33億円の黒字となりました。また、財政運営の指標とする旨を定めた健全化を判断する4つの指標のいずれもが適正な数値となっており、引き続き健全な財政を維持しております。
今後も、千代田区第4次基本構想とともに策定しました「今後の行財政運営の考え方について」に基づき、健全な行財政運営に取り組んでまいります。
次に、令和8年度予算編成についてです。
我が国の景気は緩やかな回復基調にあるものの、食料品を中心とした物価高騰が続き、区民生活への影響は深刻です。加えて、少子高齢化や人口減少、気候変動に伴う自然災害の激甚化、治安や衛生環境への不安、外国人住民との共生、情報リテラシーの問題等、現在及び将来に向けた課題が顕在化しています。
さらに、天下祭をはじめとする伝統的な祭礼文化、神保町の活字・出版文化、秋葉原のポップカルチャー等、千代田区が誇る文化資源の活用と地域コミュニティの醸成も大きな課題です。
先行き不透明な社会情勢においては、行政運営にも柔軟性と迅速な対応力を備えていくことが肝要となります。職員一人ひとりが主体性と挑戦する姿勢を持てるよう、職員と共にチーム一丸となって活力ある組織づくりに取り組み、持続的に発展する千代田区をめざしてまいります。
こうした認識の下に令和8年度予算は、「今日の声を、明日のかたちにする予算」をテーマに掲げ、編成に取り組んでいるところです。
次に、令和7年度補正予算について申し上げます。
令和8年度から全国で本格実施される予定の乳児等通園支援事業を今年度試行的に実施する費用について、また、高齢者のデジタルデバイド解消に向けた取り組みとして、満65歳以上の高齢者がスマートフォンを購入する際の費用について、追加計上させていただくものです。
乳児等通園支援事業いわゆる「こども誰でも通園制度」につきましては、保護者の就労要件を問わず、生後6か月から満3歳未満の未就園児が一定の時間、柔軟に保育施設を利用できる新たな制度です。国の「こども未来戦略」に基づき、令和8年度より全国的に実施されるものですが、本格実施に先立ち、本制度を混乱なく着実に展開していくため、本年度より試行的に実施していく必要があることから、今定例会において補正予算の他、関連する条例案を提案しております。
最後に、今回提案いたしました諸議案について申し上げます。
予算案件といたしまして、令和7年度一般会計補正予算第2号の1件、決算案件といたしまして、令和6年度各会計歳入歳出決算の認定について、条例案件といたしまして、条例の一部を改正するもの2件、契約案件といたしまして、旧区立練成中学校改修工事請負契約について及び改修電気設備工事請負契約についての2件、指定管理者の指定について2件であります。
また、報告案件といたしまして、令和6年度千代田区健全化判断比率について、二七通り東地区歩道拡幅工事請負契約の一部を専決処分により変更した件についての2件であります。
何とぞ慎重なご審議の上、原案どおりご議決を賜りますようお願い申し上げます。
以上をもちまして、令和7年第3回区議会定例会の開会のご挨拶といたします。ありがとうございました。
令和7年9月17日 千代田区長 樋口 高顕
(注意) 本文は、口述筆記ではありませんので、表現その他若干の変更があることがあります。
お問い合わせ
政策経営部総務課総務係
〒102-8688 東京都千代田区九段南1-2-1
電話番号:03-5211-4134
ファクス:03-3239-8605
メールアドレス:soumu@city.chiyoda.lg.jp
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください